時計のお話 −腕時計編−
防水性能信じていますか?
メーカーや量販店で「○○気圧防水ですから、○○メートル潜っても大丈夫ですよ」なんて言っていますが、どうなんでしょう?
多くの時計を見ていくと、防水性能が上がるには構造上のポイントがあるようです。
第一の条件:裏蓋及び竜頭のパッキンがしっかりしていること
5−10気圧防水の時計は大体パッキンによる防水条件をクリアしているようですが、パッキンってゴム製のものが多いですから、使用していれば劣化します。
第二の条件:ガラス(風防)の強度と竜頭がネジ込みか否か
水圧であれ気圧であれ、外圧が加わればケースや竜頭は時計の中心に向かって加圧される(閉まろうとする)ので防水テストなどではネジ込みではないモデルでも、10気圧防水が通るモデルも多々あります。
しかし実際に使用するとなると、水流(気流)があるので、ネジ込みでないと、簡単に竜頭が開いてしまい、入水してしまう可能性があります。 竜頭がネジ込みになっていれば水圧に負ける心配もありませんし、パッキンもしっかり押し込まれますし、より安全になるということなのでしょう。
また、圧が上げ下げしている最中にガラスが割れることもありますので、ガラスの厚みや、ケースとの隙間が無いかも重要な条件になるようです。
第三条件:ケースの強度
10気圧以上つまり100m以上潜るとなると、ケース自体の強度が重要になってきます。全体的にゴツく分厚く重い時計になります。…ところで皆さん100m潜ります?
しかし、(なにはともあれ、)物質は劣化します。 パッキンやガラス(プラ風防)はもちろん竜頭のネジ込みもネジが利かなくなる(バカになる)ことがあります。ですから過信はいけません。
当店では防水試験機もありますし、防水テストも行っていますが、合格しても「無理しない方がいいですよ」とお話しております。
と、ここまで書いてまいりましたが、メーカーの開発の方に聞けば「もっと○○の条件があるのに…。」と言われてしまうかもしれません。
※ 別項「防水テストって何なのさ?」もご覧下さい。
防水テストって何なのさ?
電池交換の際、マリンスポーツにご使用される方には防水テストをお勧めしております。 その作業工程、まずはざっくり書いてみます。
1.時計の内部(文字盤を含めた機械)を抜き取り竜頭裏蓋をきちんと閉めます。
2.水槽上部に時計を吊るしゆっくりと加圧します。
3.水槽内に時計を沈め(下ろし)安定させます。
4.ゆっくりと減圧します。(※)
5.水槽上部に時計を上げて最後までゆっくり減圧します。
6.時計を出して、乾燥後機械を収めて終了。
※この時に防水性能が落ちている箇所があるとそこから先程加圧した際に入ったガスがプツプツと出てきます。もちろん内部に水が入ることはありません。
このように防水テストは丁寧な作業です。全体に安定して圧を掛けますので、実際の水流や動きによって掛かる圧とは異なります。外装に耐水加工を施すわけではありませんので、やはり防水テストの合格しても、大切な時計にはあまり無理をさせないことをお勧めします。
また、防水性能が良くとも、冬場には結露の危険性が上がります。 例えば寒い屋外からあったかい温泉に移動した時や寒いゲレンデから暖炉のあるお食事処に移動した時など、急激な温度の変化によって、時計内部が結露してしまうことがあります。湿気がおさまれば問題無い様にも思えますが、それが入水なのか結露なのか判断するのは難しいですし、出来るだけ早めに一旦機械を出しての乾燥作業をご依頼頂きますことをお勧めします。
ソーラー電波時計は万能か?
ソーラー時計/自動巻きクオーツのデメリット、そんなことを書いてみます。
「ソーラー時計+電波時計」完璧な時計な気がします。 しかし、ソーラー時計や自動巻きクオーツも蓄電池を搭載しております。
蓄電池をキャパシタと呼んでいるのですが、このキャパシタ、寿命があります。
車やバイクをお持ちの方はわかると思いますが、バッテリーにも寿命がありますよね。 そんな感じです。
もちろんモデルチェンジ毎に性能が向上していますが、やはり引き出しにしまっておいて長く光に当てないと充電しなくなってしまう場合があります。 そして工業製品ですから寿命もありますし、油の劣化等によりオーバーホールが必要になることもあります。
ですからメーカーさんの宣伝ほど完璧な物でもないと思います。
でも、最近は薄型の物も出てきましたし、価格も落ち着いてきましたし、ソーラー電波時計、便利ですよねぇ。 ご理解頂いたうえでご使用頂ければ幸いです。
※もしソーラー時計を引き出しにしまっておいて動かなくなった場合には、まずは窓辺で日光浴させてあげてください。天気の良い日に日光浴(充電)して、次の朝まで動くようであれば、キャパシタ交換しないでも大丈夫かもしれませんよ。
純正電池がご希望ですか?
大体の場合(※)、正規品でも並行輸入品でも海外メーカーの時計には最初輸入品の電池が入っています。特にETA社(エタ/スイス)ムーブメント+RENATA(レナタもしくはレナータ/スイス)電池の組み合わせをよくみます。
そして時折「純正の電池を入れてください。」というご依頼を受けることがあるのですが、そういった時、当店では「日本のメーカーの電池にしませんか?」とお勧めしております。
もちろんRENATAの電池も取扱いしておりますし、入手することも可能なのですが、(実はRENATAの電池の方がSONYの電池より仕入が安かったりします。)経験上海外メーカーの電池(RENATAに限らず)は電池切れから漏液までの時間が早いようなので、可能であれば日本のメーカーの電池を使用したいと考えております。
一部の特殊な物を除いて電池自体は日本のメーカーでも海外メーカーでも国際規格ですから適合する物がありますが、電池切れして「忙しいからそのうち・・・」と気が付くと一週間一ヵ月と経過してしまった場合、漏液で修理が必要になる確率が出来るだけ低い物を使った方が良いのではないかと思うからです。
よって、RENATAしか製造していない規格の物以外は、国内メーカーの電池を取り揃えておりますし、電池に関しては日本贔屓でお勧めしております。
※輸入品の時計でもSEIKO子会社CITIZEN子会社のムーブを使用している場合あり、この時には日本メーカーの電池が入っていることがほとんどなのです。
手巻き機能も使っていますか?
自動巻き腕時計をお持ちの方、その時計は手巻き出来ますか?
自動巻きの機械の多くは手巻きの時計の上に自動巻きの機構を組み合わせた構造になっています。
そして、完全に停止した状態から使用する時には動作始めるまで手巻きで巻き上げてから気にせず使うと順調に動いてくれます。
また、座職の方や仕事中は時計を外している方は、巻上げ不足になりやすいので、ふと気付いた時に手巻きしてあげると良いと思います。
たぶん説明書に書いてあったと思うんですけど、意外と読みませんよね。(苦笑)
ちなみに、自動巻きのゼンマイは完全に巻き上げた状態からはスリップするようになっているので、構造上巻き過ぎで切れることはありません。
ワインディングマシーンは必要か?
ウオッチワインダー、ワインディングマシーン。
動作テストに利用していますし、当店でもご注文承っております。
では、時計を複数個使い分ける方に必ず必要か?
尋ねられた時には「お好き好きだと思います。」とお答えしております。
週末だけ使用するのであればその時に手巻きを併用して時間を合わせて調子良く動いてくれれば良いと思いますし、もっと使用しない冠婚葬祭用時計でもたまに手巻きで巻いて動かしてあげれば良いと思います。
もちろん時間を合わせるのが面倒であれば、ディスプレイ的な要素もありますし、ご使用頂くのも宜しいかと思いますが、ウオッチワインダーを使用しないことによって著しく劣化が進むということも無いと思います。
ただし、タンスにしまいっぱなしは湿度的によろしくないので、竜頭のパッキンや革ベルトが劣化してポロポロなる危険性がありますので、たまには様子を見て使ってあげてください。